特集!越谷の技人たち(4)

 

農家として越谷で生きる

 

都市近郊の立地を活かし循環できる農業を実践する

遊佐農場
遊佐謙司

越谷駅から車で20分ほど走ると、眼前にのどかな田園風景が広がる。遊佐農場は、そんな場所にある。農家5年目の遊佐謙司は、「地域の中で、生産と消費が当たり前に循環する」農業の実現を目指しており、「地域の中で持続できる仕事がしたい」と話す。このような「地産地消」を実現するには、その地域で作られる作物量に釣り合う消費者の存在が必要である。住人が少ない過疎地域では、地産しても地消ができないのである。その意味で、地産地消型農業は「都市農業」だとも言える。地域住民との距離が近いという立地的特徴を活かした農業だ。遊佐農場で働くスタッフの河野彩は、「パートとして限られた時間でも、土に触れる農業に携われるのは、本当にうれしい。都市農業は、分業農業と言うこともできて、無理のない範囲で野菜を育てる楽しみを仕事にすることができる」と話す。

 

越谷市には、「都市農業」に適した環境がある。越谷市は、1970年代から駅周辺を中心に宅地開発が進み、毎年、10ヘクタールの農地が宅地に姿を変えている。それでも現在、越谷の全面積うち、約六分の一(15・9%)は農地である。ちなみに、東京23区では、この率は0・8%と著しく低い。

 越谷を拠点に、「トカイナカ(都会+田舎)」ならではの商いを営む遊佐農場は、野菜栽培、直売、宅配、オリジナル商品開発を手掛けている。

 循環を重視する遊佐は、「自然なことを続け、不自然なことは避ける」のだと言う。その言葉通り、遊佐農場では農薬を使わない。また、野菜の種は、自家採種。野菜の実を収穫せず、種ができるまで育て上げ、種を採り、それを翌年、畑に戻し、育てるという「循環」を繰り返すのである。日本の多くの農家は、毎年、海外から野菜の種を購入しており、種の輸入が滞ると農業を継続できなくなる。

 体験では、畑で無農薬栽培のさつまいもを掘った後、みんなで特製豚汁を食べる。もちろん、畑や野菜に関するまじめで「ためになるお話」は、遊佐の得意技。作業の合間や食事中に、話しかけてみるとおもしろい。芋堀りで体を動かした後に、畑の開放的な空気を満喫しながら食べる特製豚汁の味は、格別だろう。

 なお、体験終了後に持ち帰ることができるさつまいもの「お土産」の量は、春から秋にかけての天気次第。自分で取ったさつまいもを家族で楽しく食べていただきたい。


自分の好きについて語り合おう

つながりの広がり

木陰の風が気持ちいい真夏の午後、越谷市中央市民会館に6人の技人にお集まりいただきました。共通点は、まちづくり越谷が、越谷「技」博で出店を希望する人に向けて準備したエンカレッジ・セミナーの受講生であるということだけ。6人は、年齢も仕事も、住んでいるまちも違います。セミナー内で、「越谷『技』博の魅力を伝える特集記事の写真撮影を明後日、開催します」と無謀な募集をしたところ、フットワーク軽く集まってくださいました。当日は、撮影の合間にそれぞれの講座について情報交換。最後は、水郷越谷の河原風景を見下ろしつつ、爽やかな風に吹かれながら、越谷「技」博への意気込みを語って頂き、撮影終了。

エンカレッジ・セミナーでは、自分の「技」の魅力を言葉に変えて、初めて会う人に伝えることができるようになることを繰り返し練習しました。その練習の中で、技人同士の話が盛り上がり、なんと開催期間中、CAFE803内で常設展示というコラボ企画(※)が誕生しました。

 セミナーの中で、絵画教室をご夫婦で営む渡辺なおさんは、「どんな人でも、アートを楽しんでほしい!!」と何度も伝え続け、シャッターペインターのささきさとみさんと、出会います。二人は意気投合し、コラボ企画「障害を持つ人と持たない人との壁を取り払う〝あるがままの芸術〟(アールブリュット)」を実現させました。技人同士の繋がりから始まりますが、36日間の開催期間中に、毎日、新たな学人が、その輪の中に、どんどん加わっていくことでしょう。

越谷「技」博をどっぷり楽しむ

  越谷「技」博では、100種類を超える講座の中から、毎日、自分の好きなものをあれこれ選ぶことができます。講座に参加して出会えるのは、自分のように、その「技」を愛する人たち。初めて会った人とでも、共通点があれば、すぐに打ち解けられるはず。でも、越谷「技」博の楽しみは、それだけではありません。越谷「技」博というイベントの間、学人はいろいろな講座に参加します。二つ目、三つ目の講座では、すでに体験した講座のお話を、新しく出会った学人同士で伝え合うことができます。そうすることで、講座の体験から生まれた思いを共有できる仲間が、少しずつ増えていきます。この仲間作りが、越谷「技」博最大の醍醐味なのではないでしょうか。

 越谷「技」博は、学人が講座に参加したことで得る経験を最も大切な「価値」だと思っています。そして、そのかけがえのない「価値」を共感・共有して行くための仕掛けが、越谷「技」博というイベントです。単発のワークショップに参加するのとは一味も二味も違う「つながりの広がり」を、どっぷりお楽しみください。

※「アールブリュット」&「越谷育ちのアート」展

日時:11月7日(土)〜11月29日(日)9時〜18時

会場:カフェ803 《入場無料・見学自由》

◎マスクご着用の上、ご入場ください。


技博の期間は11月7日(土)〜12月13日(日)
講座のご予約はこちらから

越谷技博公式サイト

https://wazahaku.com/